2012年4月13日金曜日

反ユダヤ主義の批判


 「なぜこんなに長く、年老いるまで私は沈黙していたのか。イラン民族を絶滅できるような原子爆弾を持つ国(イスラエル)があるというのに」。こんな記事が44日の南ドイツ新聞に載りました。詩の形で書かれた「書かねばならないことを私は言う」という題の文章を書いたのは、1999年のノーベル文学賞受賞者であるドイツの作家ギュンター・グラス(84歳)です。

 それ以来この一文がドイツ国中に大きな反響を呼び起こしています。それは批判の対象がイスラエル国家であるからで、これは明らかな「反ユダヤ主義、ユダヤ排斥思想」であると、政界をはじめ各方面からの反対が起こり、イスラエル政府もグラス氏をpersona non grata(好ましからざる人物)として入国禁止をしました。それから10日近くなりますが、その声は未だに静まっていないようです。

 世界平和に脅威となる原子核兵器批判をすることは、現在の社会で誰もが行わなければならないことだと思いますが、今回の批判がイスラエルというユダヤ人国家に対するものである、という点でドイツ中が神経質になっているわけです。ご存知の通り、ドイツは過去に大量ユダヤ人虐殺を行った国であり、第2次大戦後から今日にかけてそれへの悔悟と反省を続けています。それにもかかわらず、一部のネオナチの運動も後を絶たず、ドイツ政府は頭を悩ませています。最近でもツヴィカウ・トリオという極右テログループの若者が外国人排斥運動として、ドイツで経済的に成功している外国人を多数 (反ユダヤだけではなく、その他トルコ人やギリシャ人、ドイツ人警官等)殺害し、それが10年以上も摘発されずに見過ごされてきた、という失態が明らかになり批判されている国です。

 ここに載せた写真は、ユダヤ系の老人ホームやシナゴーグ(ユダヤ教会堂)の警護にあたる警察官とポリスカーですが、当市デュッセルドルフのこういう場所は1365日、夜昼通し四六時中警備されているのです。一見平和で治安の良い国と思われるドイツの各都市でこのような絶えざる警備・警護が必要であるというのが現状です。

 そんな状況の国で、今またユダヤ排斥の思想を表す文章が発表され、このため反ユダヤおよび反外国人の運動に拍車をかけることになりはしないか、と国中が恐れているわけで、今後の成り行きが大いに気になるところです。

2 件のコメント:

  1. 三千男さん
    この反ユダヤ主義の考え方はいくらか共感できる所もあります。まずギュンター・グラス氏の勇気と共に世界に冠たるアメリカ経済主義(ユダヤ人の影響が大きくアメリカ政府も遠慮している)に対するドイツからの本音反発を称えます。
    イスラエルの今持っている世界への密かな野望や自分本位の考え方がこれでクローズアップされるかもしれません。金だけが力という感じです。これまで歴史的に被害者を装ってきたユダヤ人国家の真実の姿を見る感じです。大阪の山さん

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  2. 山さん、とにかくドイツではほとんどタブーとなっているユダヤ関係の発言をする時、誰もが神経をピリピリ尖らせます。それが真実を述べている場合にでもです。
    今回のグラス氏の発言に対して、よくぞ言ってくれたと、ドイツ政治上のタブーに触れた勇気を褒める人もドイツ人の中にはいますが、一般的には批判的です。

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