2012年7月26日木曜日

Kö-Bogen


 今年515日のブログに「地下鉄工事その後」の報告を載せました。その際、Jan-Wellm-Platzに建設中の大きな建物は「新路線の駅舎になるのか?」と書きましたがそれは間違いで、最近になってその正体がはっきり分かりました。

 これは“Kö-Bogen“と名付けられる一画となるようです。新地下鉄路線のWehrhahn – Linieが完成した暁には、現在何本かの路面電車が集まっているJan-Wellem –Platzの駅が不必要となり地上から消え去り、そこに大きな空間が出来ます。そこへ建つのが今工事中の建築物なのです。

 Bogenは「曲線、弓形」という意味ですが、ここはHofgartenの庭園端から有名な高級ショッピングストリートKönigsalleeまで弓形に延びるのでこの名称が与えられました。その完成図が停留所のところに出ていました。ずいぶんと変わった形の建築物群ですね。アメリカ人建築家Daniel Liebeskindの設計になるこの変わったスタイルでモダンな建物は、主にブランド品専門店、オフィス、レストラン、カフェ等になります。アパートも建つと聞いていたので、「ライン河、アルトシュタット、ケー等に近く歩けて便利でもあるし、一軒買うことにしようか?」と、妻と相談していましたが(冗談半分です!)、残念ながらアパートが出来るというニュースは入っていません。

 そして現在停留所の上の方に高架線のように走っている自動車道路(「むかで通り」Tausendfüßlerと名付けられている)も取り去られ、地下へ移されます。そしてクネクネと曲がったそのスペースは歩行者天国となる、ということですから、町の真ん中に素晴らしい散策用のプロムナードが出現するわけです。Bogen建設には市民の大きな反対もあったようですが、緑地帯出現で今後彼らが蒙る恩恵も大きいことを考えると、市の新企画はすべてネガティブな点ばかりではないようです。

 5月の写真と見比べてみて下さい。本当に速く工事が進んでBogenの建物も下から見上げるように高くなり驚いています。その間にも地下では日に10mずつ地下鉄工事も進んでいます。デュッセルドルフの中心街はその内、大きな様変わりをすることでしょう。

2012年7月19日木曜日

キルメスがやって来た!



 今年もライン河畔にキルメス(Kirmes)がやって来た。普段は羊が草を食んだり人々が散歩をするOberkassel地区の165,000平米にも及ぶ草原に一大移動遊園地が出現する。

 Kirmes(ドイツ人の発音では「キアメス」と聞こえる)の語源はKirchmesseであり、教会(堂)Kircheが新しく建築された後その献堂のための祭りMesseという意味をもつ。それが例年の記念の祭りとなり、人々が集まって楽しく飲み食いし、またいろいろな遊びを行うようになった。今では教会とはあまり関係のない、ドイツ各地に見られるような移動遊園地と飲食小屋の集まる大規模なイベント「キルメス」となったのである。デュッセルドルフの「ライン河畔最大のキルメス」は今年で111回目の開催となる。

 開催期間は10日間(今年は713日から22日まで)、今日私が行った18日はちょうど中日に当たる。当市のニュースレターによれば、数日の雨続きの悪天候にもかかわらずこれまでに100万人ほどの人出があったということだから、一日にほぼ20万人の人が市内また郊外から訪れたわけだ。天候が少し持ち直して来たようだし、金曜日には恒例の花火大会もあるので週末までには200万人を超すことだろう。

 これだけの人数を運ぶのは主に路面電車とバスで、ライン交通局はいろいろ特典をつけたコンビ切符を一枚12ユーロで売っている。この期間中最終電車は平日0時半まで、週末は午前1時日曜日は2時まで、運転時間の間隔も短くして走らせる。駐車スペースが足りないので、自家用車では来ないようにという注意・警告が町中に張り出されているが、それでも車でやって来て駐車違反をする人が絶えない。これまでに300枚の違反チケットが切られ、70台の車がレッカー車で運び去られたという。

 平日の開始時間は午後2時。私は3時過ぎに着いたが、ご覧の通りのすでにひどい込みようだった。この時間帯は子供連れの家族が多く(ベビーカーも多い)、子供用の乗り物が人気を呼ぶ。そして後期高齢者層の人も驚くほど沢山出て来ており、中には車椅子の人もいる。誰もが楽しそうに大声で話し、笑い、歩き回っているのは、見ていて気持ちがいい。これが夜になると若者の数がぐんと増える。11晩だけでは足りない人のため、ホテルもダブルルーム115070ユーロのオファーをしている所がある。宿泊を延長すればレートはさらに安くなる。

 しかしこれだけの大規模なジェットコースターを初め多くの「絶叫マシーン」類の施設を他所から運んで来て数週間かけて建設し、10日後にはまた解体して移動するわけだが、それでビジネスとして成り立つのだろうか、と人ごとながら心配になる。

 ライン河沿いのこの辺りは、富豪が多く住む1等地で立派なお邸が立ち並んでいる。しかし7月後半のこの時期は夜半過ぎまでの雑踏と騒音で、おちついて家の中にはおられないだろう。お金持ちたちはきっと毎年どこか南の島にでも休暇に出かけて、明るい太陽を楽しんでいるに違いない。

2012年7月11日水曜日

Occupy運動


 デュッセルドルフの繁華街の真ん中シャドーアルカーデンの横にある、高い塔と赤煉瓦の建物をもつヨハネ教会の中庭に、薄汚いテントを張って若者たちが住み始めたのはいつ頃からだろうか。今朝その辺りを歩いてみたら、テントとスローガンの立て看板はそのまま残っており、数人の若者がポップ音楽を聞きながら踊ったり、雑談したりしていた。

 これは昨年秋ニューヨークのウォールストリート占拠で始まった“Occupy Movement“に同調したドイツにおける運動の一環である、と聞いた。この運動の発端は、社会における経済格差をなくすため、下層階級が一致して下からの改革を目指そうというところにその目的がある。アメリカで掲げた彼らのスローガンは“We are 99%“というもので、上位1%を占める富裕層の資産が増加する中で40%もの失業率に悩む残り99%の国民層の生活は困難となり、経済格差は益々広がるばかりだ。この差別の大きな社会に真の変化をもたらすのは、我々下層階級の一致団結しかないという確信をもって、ウォールストリートで株式市場の取引が開始される時間を狙ってデモを開始したのが20119月であった。

 日本でも昨年“Occupy Tokyo“が起こり、東京電力や経済産業省にデモが行われたことは新聞やTVの報道で読み聞きしたが、その規模は500人ほどの小さいものだったようだ。アメリカでの運動も2ヶ月で下火になったと聞く。

 ヨハネ教会の中庭には丸形の噴水があり、そこから霧のように吹き出される水が美しく、行く度に心癒される思いがする私の好きな散歩場所であった。なぜ教会の中庭を選んだのか?通りの向かい側に当市の証券取引所があるからか?今日行って見ると噴水の水は出ておらず「(君たち)反乱せよ、怒りを発せよ!」(Empört Euch)というドイツ語のスローガンが書きなぐってあった。これは解るが、もう一つのは英語で“Occupy your heart“heartは赤いハートマーク!)となっていたのは一寸理解に苦しむ。「君のハートを占拠する(せよ)」では愛の告白みたいではないか?!

 それはともかく、ドイツでのOccupy運動はアメリカにおけるほど盛り上がらないだろう、というのが一般的な見解のようだ。アメリカに比べ、より進んだ福祉国家であり、失業率もより小さく、インフレ率も最低限に抑えられている、より安定したドイツ社会ではあまりインパクト(強い効果)を持ち得ない、というのが政治学者、経済学者の意見である。

2012年7月1日日曜日

山猫の村


 
 テューリンゲンの休暇の最後の日、ドライブの途中で“Wildkatzendorf, Hütscheroda“という看板が目に入った。「山猫(野生猫)の村」とは面白い、と興味を引かれ行って見ることにした。このヒュッチェローダは民家も余りない小さな村で、住民の数はたった62人だ!ただ、かつての「領主の館(Herrenhaus))を改築して70床ほどの同名のホテルにしており、これがよく繁盛し宿泊客も沢山来ると聞いた。

 この村の回りはみごとな草原に囲まれ、ここに沢山の野生の猫がいるという。村から出て数キロ、ぐるりと歩いてまわれるワンダーリングの道には「野生猫散策路」 (Wildkatzenpfad)という名前がついている。快晴の午前中のことで、黄昏時だけに活躍する野生猫に遭うことはなかったが、羊飼いが犬を連れ沢山の羊に草を食べさせていたのは実にのどかな風景だった。

 1時間以上歩いた後、正午を少し過ぎていた頃村のはずれにある「野生猫観察所」なる小動物園の施設に5ユーロほど払って入ってみた。ところが猫は辺りが薄暗くならないと出て来ない、先刻11時頃に規定の与餌時間がありその時はえさを食べに出てきたのだが、次の2時の餌時までは昼寝だ、と係員が説明した。「何のために入場料を払って入ったのだ!」と、観客は皆少々おかんむりだ。係員も悪いと思ったのか、一生懸命施設と山猫の習性などについて解説を始めた。

 「この観察台のついたガラス張りの施設建設には百万ユーロの費用がかかりました、ヒッチェローダの村は旧東ドイツの軍隊用射撃訓練所近くにあり、東西統一がなければ、立ち退き令が出て廃村になるはずでした、黄昏れ時に山猫の捉える餌は主にネズミ(時にはカエルも)だが、ここでは動物保護協会の反対で生きたネズミは与えられないので、殺してから与えています、(ヘビは死んだ餌は食べないのでペットショップや動物園などでは例外的に許されている)切符を売っている案内所で山猫のビデオを見せているのでお帰りにどうぞ」というような内容の話が20分も続いた。

 私はそんな話の途中で抜け出し、カメラをもってあちこち歩き回った。ひょっとしたら猫に会えるのではないか?と願いながら。ところが、遠くからやって来たお客に気の毒だ、と思ったのか、一匹だけ若い猫が現れ、寝そべったり、目を開けたり、小山を走り回ったりして、写真のモデルになってくれた!そんな幸運に恵まれたおかげで、これでここに本当の山猫の写真が載せられる。