2015年12月20日日曜日

デュッセルドルフの避難民


 現在のヨーロッパを騒がせている問題は言うまでもなく東方諸国からの避難民問題である。彼らの大移動の波が始まった当初、ドイツが「歓迎」の意を表した時、隣接する東欧諸国にどんな混乱と批判が起こったか、連日のTVニュースが報道していた。

 ドイツのほぼ西端に位置しているここデュッセルドルフにおける避難民受け入れの状況は次の通りである。11月末の避難民受け入れ数は6500人ほどで、年末までにその数は70007700人に達すると見られている。そして驚くべきことにその3分の1は未成年者なのだ。中には保護者なしで非難して来た子供もいる。出身地は大多数がシリア、アフガニスタンであり、その他に東欧のセルビア、マセドニア,アルバニア、コソボとアフリカのナイジェリア、ギニアも含まれる。









 彼らを収容する宿舎はここに写真を載せたような簡易住宅であり、その一つのユニットは平均540㎡の面積を持ち40人を収容する。一カ所に宿舎5ユニットと管理棟を回りに設置し、真ん中のスペースは子供のための遊び場となる。









 そのような簡易住宅が町のあちこちで目につくようになった。今日の午後サイクリングを兼ねそんな場所を3つほど見て回った。そこで初めて避難民の人や子供に会い、また簡単な言葉を交わすことが出来た。こちらの顔を見ると「ハロー」と笑顔で話しかけて来る。スケートボードや自転車で構内を走り回り、砂場で遊ぶ様子はどのアパートとも変わらぬ光景だ。ただ周囲に金属の頑丈な塀が張り巡らせてあることを除いては。難民登録の後彼らは就学の義務があり、両親・保護者は最寄りの学校に送らなければならない。すでにその効果が現れているのか、片言のドイツ語を話す子もいる。柵の外に出るのは許されているらしく、徒歩や自転車で自由に通りに出歩いていた。









 幸い入り口の所にいた市の職員の人にいろいろ質問し、情報ももらうことができた。簡易住宅の住人はユニット平均40人であるから一カ所に200人が住むことになる。中に入って部屋を見学することは出来ないが、写真で見る限り内部には2段ベッドと洋服タンスが置かれ、キチンとトイレの設備がある。現在計画されている(完成済みも含め)簡易住宅地は市内に30ほどある。単純計算で200x30箇所=6000人となり、宿舎はまだまだ足りないことが判る。今後も候補地を探し出し建設を続けなければならない、ということだ。

 陸続きのヨーロッパとは言え、気の遠くなるような長距離を徒歩で征服し安住の地を求めて来た人たちをこの国は受け入れ保護し、宿舎やその他の生活に必須の条件を与えている。それは戦争や迫害のため保護を求めて来る人を受け入れ、彼らにはAsylrecht(庇護権)が与えられる、と「ドイツ共和国基本法」(Das Grundgesetz für Bundesrepublik Deutschland )が定めているからである。メルケル首相の寛大で温和な政策に基づきドイツは彼らの第一の目的地として欧州最大の難民受け入れ国となっており、その数は80万人に上る勢いだ。しかし最近ではあまりの流入数の多さに与党内からも批判が出て、彼女も緩和策を打ち出さざるを得なくなったようだ。EU共同体諸国も難民流入緩和策として、シリアの隣国トルコに援助金を提出し難民引き受け数を増やしてもらう手段をとったばかりだ。

 ただ政治・政策上の批判だけでなく、実力行使に訴える急進派グループも増えつつある。ドイツ内の避難民施設への放火・破壊・人身攻撃事件はすでに1300件に上っているのが現状だ。ドイツ人の心は難民に対する歓迎と敵対の感情の間で揺れ動いているが、それが来る新年にどのような方向に進んで行くか、一瞬たりとも目が離せない。

1 件のコメント:

  1. 三千男さん、難民対策は、首相が代表して人道的にカッコよく受け入れたワリには大変ですね。デュッセルドルフが例外ではないようですね。宗教、経済、人種、歴史などが絡んだ複雑な難民ですね。一時は、シリア難民だけをイメージしていましたが、他にも色々あり、アフリカ難民が意外に多い感じですね。今後、恒久的な受け入れを政府はどう考えているのか、ドイツの国民感情がはたして喜んで受け入れるのか、難しいですね。限界は何のファクターだと思いますか。受け入れ難民数だけでもないでしょうね。大阪の山さん

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