2014年7月10日木曜日

リコーダーの魅力


 私が初めて手にした楽器は小学生時代のリコーダーだった。安くて手っ取り早い、吹けば誰にでも鳴る手軽な縦笛。とにかく学校の音楽の時間に持たされたソプラノリコーダーがそもそもの初めであったと覚えている。その後横に吹く笛(篠笛だった)に興味が移り、大学時代にフルートに落ち着いた。

 この2年間ばかり我が家でリコーダーの音が絶えたことがない。と言っても、私がまた吹き出したわけではない。やっているのは妻である。彼女は何にでものめり込むタイプで一時はゴルフに熱中していた。それが10年近く続いたが、ある日突然「時間も労力ももったいないから、もうしない!」と宣言し、会員権は売ったかどうしたか知らないが、ピッタリ止めてしまった。

 その後はまた数年間押し花に没頭していた。押し花と言っても小学生の夏休みの宿題みたいなものではなく、芸術作品で大きなものも沢山創り展覧会にも出品した。その熱もようやく冷め、この2年間は「何か楽器をやってみたい。なるべく取っ付きやすいものを」と、家庭教師の先生も探し出し、毎週のレッスンに来てもらいレコーダーに没頭している。

 最初は基本的な楽器のソプラノ(C管)で始めたが、リコーダーに関する限りアルト(F管)の曲が多く楽譜の入手も楽なので、彼女はこのところアルトに集中している。リコーダーにはその他ソプラニーノ、テノール、バス等があるが、最近テノール(C管)が追加された。すべて運指はバロック方式で木製の笛である。我が家にあるソプラノ笛はカエデ、ナシ、オリーブ、アルト笛はモモ、ツゲ、ナシ、そして最近買ったテノール笛の材質はサクラである。材質によってそれぞれ音の感じが違い面白い。これだけ何本か買っても、他の楽器(例えば一本何十万、何百万円する銀製や金製フルート)と比べれば手に入れやすい。もちろん本当に良いもの、大型のコントラバス笛はさらに高価なのだろうが。

 独奏するのも良いが、リコーダーの面白さは合奏にあるのではないだろうか。元々ルネッサンスやバロック時代の素朴な古楽器であるので、現代の楽器に比べ音質は表現力に欠ける(世界的な名手は別としてだが)。複数の笛でやる合奏がその欠点を補ってくれるのだ。それで私が第一の犠牲者となったわけだが…。妻は毎晩の音階練習等が終わると「さあ、いっしょに吹きましょう」とデュエットに誘う。私は時には喜んで、時にはいやいやながらお付き合いをしている。そして親類の集まるパーティでは必ず演奏することになった(妻が申し出るので)。ここにも犠牲者がいる!

 合奏と言っても重奏(各パート一人の)だけでなく、リコーダーオーケストラというのもある。妻が楽器を購入するSchwelmの町にある19世紀創立のIbach-Hausでは時々セミナーが開かれ、専門家の指揮のもと、数十人のリコーダー吹きがそれぞれ得意なパートを受け持ち、昼食をはさんで1日中吹いている。最近は隣町Neussにもグループを見つけそちらにも定期的に出席するようになった。

 妻は夏のボーナスが入ったのでまたアルトフルートの珍しく新しいものを買いたい、と言い出した。有名なGanassi社製で材質は欧州ツゲだそうだ。試しに吹いてみなければ気に入るがどうか分からないが、インターネットでいろいろ読んでみて興味がわいたようだ。どうぞお好きなように。1000ユーロは超えるかも知れないが、高いゴルフ用品や現代楽器ほどには値は張らないだろうから。

2 件のコメント:

  1. 三千男さん、ご夫婦でリコーダーの合奏とはうらやましいですね。奥様のご希望でもそれができる貴君の音楽的奥深さがあるのですね。私たちには、それはとてもできません。リコーダーやフルートの楽器類もいろいろあるのですね。私たちが、何か一本や一基くらい持っている水準ではないです。マニアのレベルですね。今後も音楽性のあるご家庭を作り上げ、楽しい合奏を楽しんでください。大阪の山さん

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  2. 我々の合奏は、まだまだそれぞれの音符をやっと辿っているだけで、本当のハーモニーも作り出されていません。デュエットもやはり専門家の人に指導を受けつつやれば、真に音楽的な創造が出来るのでしょうが。どんな趣味を手がけても、使う道具(用具)はどうしても色々買ってしまいますね。私の場合カリグラフィーのペンとインキがたまり過ぎになっています。中には全然使わないものもある。大いに反省しています。

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