2013年12月4日水曜日

巡礼の町Kevelaerへ


 ケーヴェラー(Kevelaer)の町はデュッセルドルフから車で北へ45分、ライン河左岸にある人口27000100平方キロほどの町である。この町は特にカトリック教徒にとり重要な巡礼の地であるが、この時期ここで古い伝統的なクリスマスマーケットが開かれるということを聞いて先週末(初日の1130日)出かけた。

 この巡礼の町の初めは17世紀半ば30年戦争末期の時代に遡る。この町に向かって歩いていた一商人が、「お前の力でケーヴェラーの町に礼拝堂を建てよ」との天からの聖母マリア声を聞き、妻と協力して建てたのが、今日も残る「恵みの礼拝堂」(Gnadenkapelle)である。それを聞いた多くの信者たちが町を訪れ始めた。ある場所に巡礼者が多く集まるようになるためには、その場所で何か不思議なこと、奇跡が起こったという事実が必要条件となる。その内長年の病が治った、身体の傷害が癒えて歩けるようになった、聴力が視力が戻った等の奇跡を体験した人が出て、人々は群れをなしてこの町に向かうようになった。このようにして「巡礼の町ケーヴェラー」はその後何世紀かの間に発展して行った。その間時代により巡礼の数は増加したり減少したりしたが結果的には増え、現在は年間80万人の巡礼が詣でるまでになった。

 巡礼の行列の様子は、南に48キロ離れた町フィルゼン(Viersen)からケーヴェラーまで毎年巡礼をする妻の会社の同僚の話によると…。約50人のグループが結成され出発は金曜日夜、賛歌を歌い祈りを唱えながら夜を徹して歩き続け到着は朝になる。土曜日一日は礼拝、祈祷、祝福のプログラムで過ぎ、その夜は巡礼宿に宿泊し、日曜日にまた帰路に着く。48キロを8時間かけて歩くのだが最後の23キロが一番辛いと…。途中で出る落伍者のため伴走車がついて行く。ご詠歌を歌い、お経を唱えながら歩く日本のお遍路四国八十八カ所札所の巡礼と似た所がある。

 上記の「恵みの礼拝堂」のすぐ横に立つ「ロウソクの礼拝堂」(Kerzenkapelle)の内部に入ったが、今まで見たことのない珍しいものであり、この地を訪れる巡礼の寄進した何百本というロウソクと盾に飾られた縦30m10m高さ15mの内陣は非常に印象深いものがあった。中に「聖母感謝」と書いた日本語の盾も見られた。この広場には今年150周年を迎える高い塔をもつバジリカ教会もある。

 さて、この町のクリスマスマーケットは「馬小屋のマルクト」(Krippenmarkt)と呼ばれ上の教会やチャペルのある広場にあり、屋根つきであるので雨天でも心配ない。中に入ると真ん中にキリスト生誕の馬小屋が作られ、聖母と父ヨセフ、牧人の像が飾られ、生きたロバと羊がその前でまぐさを食べている。

 マルクトには屋台はなく、3040個のテーブルの上に、昔のマルクトはこんなだったのだろうと思わせるような品物が並んでいる。どれも格安の値段で近隣に住む農民が自分の手で作ったに違いない、簡単素朴で暖かみのある品物ばかりである。そしてマルクトにつきもののグリュヴァインやソーセージ等飲食物の屋台が一つも見当たらないのは、何か新鮮な感じがした!ほとんどの都市のクリスマス市場開始日より10日も遅らせるのはなぜか?それは「死者の日曜日」(今年は1124日)がマルクト開催期間に入るのを避けるためであり、実はそれが本来の教会暦の伝統に従った正しい開始日の決定基準なのだ。ドイツ最古のマルクト、ニュールンベルグのそれも開始日は29日(金)であった。売り上げ増加を狙ったビジネス中心のマルクト開始日決定には教会側から反対もあるらしいが、最近ではどうにもならない状態であると聞く。


 人口27000の町に年間80万人もの外来者が訪れ、そのほとんどが何泊かするとなると、どのようなことになるか大体想像がつく。信仰、信心の目的のための訪問であるとはいえ、その人たちの落とす金の額は莫大なものとなるであろう。そのためか、町全体が富んでいるという強い印象を受けた。街の通りに立ち並ぶ商店はすべて立派な専門店ばかりであり、庶民的な安売りの店は見当たらない。ホテルもレストランも豪華な造りの建物と内装で、田舎の町へやって来たと言う感じは全くしない。特に信者のための木彫りや銅製のキリスト、マリア、天使の聖像や聖画、その他諸々の宗教関係の品を売る店の大きく、立派なことに驚嘆する。そんな店では、毎月何万人という巡礼の信者たちが競って買い物をするに違いない。

 巡礼者が増えるのは暖かい季節の始まる5月頃だと聞いた。今回クリスマス時期の良い雰囲気を満喫したが、町中に巡礼の溢れる季節にもう一度ケーヴェラーの町をぜひ訪れたいものである。

2 件のコメント:

  1. 三千男さん。カトリック巡礼の聖地に行ってこられたようで、クリスマス前に身も心も洗われたのではないですか。色々な人形やモデルがあって、面白い感じですね。純なプレテストタントの方々はどういう気持ちでこのルートを歩かれるのでしょう。単なる観光意識でもないでしょうね。複雑な気持ちですね。大阪の山さん

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    1. 山さん、楽しくはありましたが、「身も心も洗われた」かどうかは疑問です!でも、一味違った感じの、ビジネス匂のあまりしないマルクトは面白いと思いました。
      プロテスタンは礼拝の対象が違うので(マリア崇拝はしない)、この聖地に巡礼することはないでしょう。巡礼という教会慣習そのものはないし、精々自分の教派に関係のある土地を訪れることで満足するのでは?(ルターのヴィッテンブルグとか)

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