2013年8月18日日曜日

双子のボタ山


 久しぶりにボタ山見学に出かけた。昨年秋口に始めてからすでにルール地方にある7箇所のボタ山に登った。リピートの分を入れると8回だが、全部で50箇所もある山を征服するのは至難の業だ。昨年の分については秋の初めからその都度ブログに報告を載せている。それを見ると最後にやったのは11月だったので、なんと9ヶ月ぶりのボタ山ということになる。その間病気をし入院・手術もあったので、体力的に果たして登れるかどうか不安を感じつつ出かけた。

 今回は車で40分ほどのGelsenkirchen(ゲルゼンキルヘン)の町(内田篤人選手所属のブンデスリーグサッカーチーム、シャルケ04の本拠地)にあるRungenberg(ルンゲンベルク)ボタ山である。先ず登り口から、青空を背景にはるか頂上まで300段続く階段を見て怖じ気づいた。しかし山の周りをグルグル迂回するサイクリング・遊歩道は避け、意を決して登り始めたら、「案ずるより産むが易し」で割合簡単に登ることが出来た。前をスイスイと登って行く子供たちに勇気づけられ力をもらった結果だ。

 
 下から眺めてすでに気づいたのだが、ここのボタ山は双子山になっている。しかし元々操業中の炭坑が当時からボタ(ズリ=捨て石)を二つに分けて捨てたわけではなく、後にここを庶民の娯楽施設にするため設計した芸術家が、そのように指定して造りかえたのである。そして両方の頂上には、ご覧のようにズングリ短い大砲の砲身のようなものが、お互いを攻撃するかのように向かい合って立っている。これは実は投光器であって、暗い夜空を背景にしてレーザービームのように、空中で光線を交叉させる仕組みになっているのだ。今の時期、日の暮れるまではとても待てないので、ガイドブックの写真で満足する他ない。日の短い季節に来てそのライトを是非一度見たいものだ。

 なだらかなスロープと草原を見るだけで、このボタ山が人々の間に人気となっていることが想像される。事実、暖かい季節には散歩を初め、お弁当を持ってのピクニック、サイクリング、凧揚げにもってこいの場所だ。今日は見かけなかったが、ラマの背中に乗って山を回るツアーもあるという。雪が降り積もれば、そりやスキーのためのすばらしいゲレンデとなる。

 ガイドブックの評価表では、「娯楽性・子供の遊び・景色」の項にそれぞれ最高の5がついている。それに続いて「自然(緑地)・フィットネス・来訪者の数」は4となっている。写真でご覧のように、草地は黄色でかなり枯れた感じであるが、今年は雨が少なく長く日照りが続いたためだろう。そして来訪者の数は?上天気の今日、数時間歩いても出会った散策者やサイクリングの人はほんのわずかしかいなかった。頂上からの景色は最高、ハノーファー、ベルリンへ向かう国道2号線側は少し騒音があるが、以前炭坑夫の社宅だったその反対側は、車の走行もほとんどなく静かなものだ。それに旧社宅がすべて改装され、色も形も統一され、高級なアパート群の様相を呈していたのは大きな驚きであった。

 さて今年も寒い季節が訪れるまで、精出してボタ山征服に出かけたいと思っている。まだまだ面白そうな山が我々の来訪を待っていてくれる。

4 件のコメント:

  1. 又元気になってボタ山めぐりが出来てよかったですね!
    同じようなボタ山でもそれぞれ特徴があって面白そうです。
    双子山の灯光器がお互いを照らしあっている様子など見てみたいものです。
    酷暑の日本では今の時期山登りなど考えられませんがドイツの枯草の景色が秋を思わせるようです。
    元気で沢山のボタ山征服してください。

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    1. かなり迷った末またボタ山へ行きましたが、思ったよりスムーズに登れました。もっとも登山やロッククライミングのような重労働ではなく、但の散歩ですが。
      投光器の写真は見事です。暮れかけた空を背景に、空中で見事に斜め十字架のように交叉しています。絶対一度は見に行きたいと思っています。

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  2. 三千男さん。ボタ山が石炭(製鉄用コークスの原料)の排石で作られていることは知られています。石炭採取孔からどういう手段で排石を運んだのかによって大きさも形も違うでしょう。日本では、人力、トロッコ、排石場所などの理由から「作業員住宅の裏地」だったケースが多く、ハイキング場所などにはまずなり得ないと思ってきました。九州や北海道のボタ山は今や雑草丘陵でしょう。ドイツのボタ山ハイキングは歴史的な好条件の跡地ハイキングの感じですよね。頑張ってどんどん上りましょう。大阪の山さん

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    1. 日本の場合、危ない、汚いがボタ山の代名詞のように言われていた、と聞きました。You Tubeでも見たことがありますが、電車の窓から見える、どうってことのない低い山という感じです。
      ここドイツ(特にルール炭田地方)では、石炭工業から発生した「負の遺産」をなんとか人のために良くしたいと言う願望をもって、各地で競ってこのような努力をしています。そのために多額の投資も行っていることは言うまでもありません。

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