2015年7月6日月曜日

紙の上に美しい文字を


 ドイツはこのところ,気温30℃台はおろか地方によっては40℃を超える記録的な猛暑となりました。幸い今朝は雨となり久しぶりに気温も下がったので、AltstadtHeinrich-Heine Institutで今日(7月5日)から始まった展覧会「文房具の歴史」に行ってきました。特に副題に「紙の上にきれいな文字を」とあったので、私はこの数週間その課題に集中的に取り組んでいたこともあり、興味を惹かれたのです。

 






 ドイツ語で文房具はSchreibwarenといい、そのまま訳せば「筆記用具」となります。展示会ではやはり筆記用のペン類が多かったのですが、それもそのはずスポンサーとなっていたのが日本でも有名なFaber-Castell社だったのです。

 







 オープニングの会の後、同社デュッセルドルフ支店長さんからいろいろ説明と解説をしていただきました。私も、数十万円もする万年筆こそ持っていませんが、色鉛筆、アートペンシル、水彩色鉛筆等々はすべて同社のものを使っています。東京六本木のミッドタウンに支店があるとか、今度訪日の際には是非立ち寄ってみます、と約束しました。

 さて「紙に美しい文字を書く」というのは、カリグラフィーの主な作業のことです。私はこれを始めてから数年経ちましたが、益々その魅力に取り憑かれ連日美しい文字を目指し書き続けています。現在集中的に力を入れているのがカッパープレート体です。

 この字体は1718世紀イギリスの商人や文筆者の間に広まったもので、丸く流れるような美しい文字が早く書け、読みやすいという特長があります。私がこの字体を初めて目にしてその美しさに驚いたのは、1959年に手にした最初の「日本国旅券」パスポートでした。そこには私の名前が黒インキで見事に書かれていたのです。その当時のパスポートは手書きで名前を入れてくれたのです。その後1964年発行のそれにも手書き氏名がありますが、その後から今日に至るまではもう器械印刷となっています。

 この字体を書くためには特別なポイントペンとペン軸(ホールダー)を使います。ポイントペンは日本では通常Gペンと呼ばれ、上昇方向では細い線がそして下降方向ではペン先が広がるマンガ描き用ペンとして愛用されているようです。これを横文字で用いるときれいな流れるような筆記体となるのです。

 ホールダーは美しい丸みと傾斜をもった文字を容易に書くためoblique holder(斜めに曲がった軸)を使います。私はずっと以前手に入れた安いプラスチック製を使っています。やはり木の軸でネジで調整出来るものが欲しくて探したのですが、デュッセルドルフではこれの入手が難しく、大手の文房具、画材屋で軒並み尋ねても見つからないのです。まあその内インターネットで英国からでも取り寄せましょう。

 











 この数週間今まで買ったいろいろなペン先を使い、文字を書き続けました。忘れかけたラテン語の勉強にもなると思い、聖書のヨハネ福音書ヴルガタ版を筆写しやっと6章まで20ページほど書きました。結果は…?4555度の傾斜は割合揃うようになりましたが、ペン先により文字が太くなったり細くなったり、またインキの濃さ薄さで全体の見た目が変わって統一感に欠けます。ペン先に力を入れたり抜いたりして書いていると、これは日本書道の筆使いに通じるところがあるな、と思いました。

 You Tube英語版で高く推奨されている日本製のペン先ゼブラ、チタンGペンや日光Gペンを試してみたく、今注文して到着を待っているところです。ペン先やペン軸が変われば少しは字もきれいに書けるようになるでしょうか?

2 件のコメント:

  1. 三千男さん。美しい字を書くことは時代・国・民族・人種を越えて皆が求めるものですよね。カリグラフィーで花文字を描ければいいですね。いい趣味です。日本の書道やアレンジなどはあるのですが、私はとんと縁がなくて眺めるだけになっています。美しさの一端程度が分かればと思って、同じ右から来るアラビア語の人に尋ねたら、アラビア語にもきちんと書道があって説明されても分からなかった記憶があります。やはり美がありました。カリグラフィーのドイツ語版(花文字の最近の一般使用状態)はいかがですか。50年以上の昔、僕が学生時代、まだ多くのドイツ市民が日常手紙などに使っているようで、教科書にも出ていましたが。大阪の山さん

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    1. 現在ドイツ語の花文字を書く人はもういないようです。先日の家族会で19世紀末羲祖父が妻に宛てた葉書を見ましたが、それはすべて花文字で書かれていました。集まった人(現代人!)がそれを読むのに大いに苦労していました。大学のドイツ語選択科目のクラスで一人の学生が、見せびらかしに宿題の独作文を黒板に書いていたのを思い出します。さすがに先生はチャンと読めていたようです。
      故義母が使っていたカリグラフィーの雑誌(1939年発行)には、あちこちに古い書体(ゴシック体ではない、ドイツ語花文字)のドイツ語がまだ出ています。私は読もうと努めましたがほぼ99%読解不能でした!

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