2015年3月7日土曜日

デミタス・コレクション


 我が家の居間にある食器戸棚。ガラス張りで外からよく見える最高の場所に並んでいるのは,30年以上も集めているエスプレッソカップ(デミタス)でその数は50客を越え,国は欧州、アメリカ、アフリカ、アジアの10数カ国に及ぶ。

 どういう動機で集め始めたのか覚えていない。いろいろな国や町へ旅した時、何か記念になるものをと買い始めたのだろう。それだけではない、町でふと見かけその形や色に惹かれて買ったものもある。蒐集をしていることを知った友人・知人からのプレゼントも、妻や娘たちのおみやげ(パリ、アテネ、ハワイ)もある。かなり値段の張るものも、二束三文のがらくたみたいなものもまじっている。

 数から言えばやはりドイツ製が最多で、マイセン、ローゼンタール,ビレロイ・ボッホ、フッチェンロイター等がある。マイセンの町は東西ドイツ統一直前に訪れた。陶器工場が休みの日であったため観光案内所で「ブルーオニオン」を買ったが、やはり高かったことを覚えている。同じ店に金銀色手描きの見事なカップがあり,当時のDM西ドイツマルクで4桁の値段(1200DM)がついていた!現在の価値では5-600€以上だろうが、小さいカップ1客にしては良い値段だったので買うのは控えた。お馴染み「波の戯れ」はずっと後になってから買ったものだ。

 ローゼンタールは一時芸術家デザインのシリーズを販売していたが、その特長はカップの取っ手の形だった。全部で数十種類はあったろうが、私の手元には4種しかない。有名デザイナーではなくとも、各地で開かれる手工業者のマルクトには職人芸を誇る絵付け師が「世界で一つしかないもの」として自分の作品を売っている。そんなカップは「決して食洗器に入れないで下さい」と注意される。

 







 日本から送られたもの、日本土産にもらったものも数客ある。ラフな釉薬を塗ったもの,素焼きの感じのもの等がある。清水焼としてもらったものは主となる絵が西欧のものとは反対側に描かれていることに気づいた。左利き用かと思ったが、右手でもってきれいな絵を相手側に観てもらう(自分で楽しむより)、という日本的な解釈も出来るな、と思ったが?

 買った時に忘れられない出来事が起こったとか、何か深い印象に残るものを観たりした場合、そのカップは本当の意味での記念品になる。その点各地の有名美術館にあるショップで名画と関連するカップを手に入れることはうれしい(俗趣味だと笑われるかもしれないが)。ウイーンのアルベルティーナ美術館(クリムト)、ワイマール、ゲーテ博物館、先月のデンハーグ,マウリッツフイス美術館(フェルメール)等がその良い例である。ローマ、スペイン広場の階段下の店で、たどたどしいイタリア語で「エスプレッソカップを探していますが、なにか面白いものがありますか、薦めてください」と訊いたのがちゃんと通じ、この写真のカップが買えたのは感激だった。もっともエスプレッソ用より、同じデザインで買ったコーヒー用フルカップ2客の方を毎朝使っているのが現実だが。

 








 
 デミタスの場合、実際に使わなくても飾りだけに買うものもあることは確かだ。カップとして実用的でなくても面白い形・デザインなので購買欲をそそられることがある。ここにあるガラス製カップはプラハで買ったが、「熱いコーヒーを入れたら割れます」と注意された。これはリキュールグラスとのこと。その他のものも、あまりに突飛なデザインなので、エスプレッソを淹れて本当に楽しめるか?疑問である。

 さて家庭でどれほどエスプレッソを飲んでいるか?朝食には欠かさないコーヒーに比べれば微々たるもの、この粉の袋もいつ買って開けたものか忘れるほどだ。従ってカップ使用もあまり頻繁ではない。外で食事した後のエスプレッソは素晴らしい味で、私はデザートなしでこれだけで大いに満足する。家庭では簡易エスプレッソマシーンで作っているが、味の方は残念ながらもう一つだ。精出して長年集めたデミタスも使わずに埃をかぶっているだけでは心苦しい。なんとかもう少しおいしいエスプレッソの淹れ方を勉強するのが目下の課題かもしれない。


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