2013年7月2日火曜日

菩提樹の花が咲いた!


 「泉に沿いて繁る菩提樹…」。ご存知シューベルトの歌曲集「冬の旅」第5曲の有名なリートで、日本語訳は近藤朔風によるものですが、これを聞くと(特に「沿いて」の語から)、イチョウやポプラのように何本かの菩提樹が並んで並木道を作っているような印象を受けます。しかし原詩では「泉の前の(市)門の所に一本の菩提樹が立っている」となっています。事実菩提樹は一本だけポツンと立っていることが多い。まあ、訳詞者が曲に合わせるため払った苦労を思って、この点はあまり詮索しないことにしましょう。それに有名なベルリンの「菩提樹通り」は“Unter den Linden“と複数になっており、昔の記念切手の絵も何本かの菩提樹の並木通り(Allee)を描いているので、そのように植えることもあるのでしょう。

 今日は公園や森の菩提樹のお話です。この木は恐らくドイツ人が最も親しんでいる木ではないでしょうか。その証拠に、菩提樹(Linde)という語のついた町・村名、地名が全国に850もあるのです。寿命の長い木で1000年も長生きするものもあると言います。そういう古木は昔から人々の集まる町村の中心に植えられ「村の菩提樹」(Dorflinde)と呼ばれ、集会所、結婚式の花嫁の披露場所、ニュースの交換所、ダンスをする会場となっていました。ある時はそこで裁判が行われたので「裁判菩提樹」(Gerichtlinde)という語も残っています。ゲルマン民族、スラブ民族にとって、菩提樹は聖なる木として重んじられ、それにまつわる物語が多く語り伝えられています。ドイツの楽器製造者や木彫り彫刻家は好んでこの木を材料として用い、特に後期ゴシック時代の優れた作品が数多く残っています。

 日本語の「菩提」という語から仏教との関連性を考えますが、これは、お釈迦さまがその下で悟りを開いた木である、という故事から来たものです。でもその木はドイツのLindeとは違う種類(インドボダイジュ)だそうです。臨済宗の開祖栄西によって日本に入って来たのはこれまた別種でシナノキ科の菩提樹、そしてドイツ(ヨーロッパ)のそれはセイヨウボダイジュと名付けられています。

 さて今の季節公園では菩提樹の花の真っ盛りです。今咲いているのは「夏菩提樹」でヨーロッパ各地からコーカサス地方まで分布しています。それに加えヨーロッパからロシア、シベリアまで見られる「冬菩提樹」や、「夏菩提樹」より開花時期が少し遅れる南ヨーロッパに多い「銀菩提樹」もあり、その種類は様々あるようです。菩提樹の花の強い香りに多くの昆虫が引き寄せられ受粉が行われます。また花(特に銀菩提樹)のネクターからは薄黄色からグリーンがかった黄色のきれいな蜜(ハニー、蜂蜜)がとれます。虫だけでなく、今の時期我々人間も、公園の散策で菩提樹の花の香りをそこここで楽しむことが出来ます。

 私はまだ飲んだことはありませんが、花を乾燥させて作る菩提樹茶というのもあり、神経を緩和させ(リラックスさせ)たり、風邪、気管支炎に効くといわれています。薬局かドラッグストアで見つかるかどうか、早速探しに行ってきます。

4 件のコメント:

  1. 泉に沿いてしげる菩提樹・・慕い行きてはうまし夢みつ・・
    中高生のころ音楽の時間に歌った懐かしい曲です。
    「これが菩提樹よ」と初めて教えられたのはぺトラさんから17年前、訪独したときのハイデルベルグの丘の上でした。6月初旬でしたのでまだ花は咲いていなかったと記憶しています。
    日本にもあるはずですね。今度植物園に行く機会が有れば気を付けて見つけましょう。
    リンデンのハーブティーは飲んだことが有ります。

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  2. baabaさん、日本の菩提樹はお寺の境内などによく植えてある、と書いてありますが、最近そんなお寺を見る機会も少なくなりましたね。植物園にはきっとあるでしょう。
    リンデンの花のお茶はトルコでは有名、ペトラの会社のトルコ人従業員から袋一杯もらってきました。

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  3. 三千男さん。私は残念ながら菩提樹の黄色の花は見たことがありません。昔、カンボジアんのアンコールワット遺跡への観光で「元はインドからと菩提樹の紹介」がありました(花なし)。匂いのある花でしょうか。大阪の山さん。

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    1. 今回のブログを契機に菩提樹に少し注目するようになりました。あるわあるわ、我が家の窓からも開花中の木が、アパートの門を出れば通りの両側に立つ木がある。ドイツはやはり菩提樹の国ですね。私はアレルギー症気味なので草花の匂いのあるものは少々苦手、でも菩提樹は行きがかり上ちゃんと嗅ぐようにします。良い甘い匂いということなので(妻の談)。

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