Essen(エッセン)市の北部にあるZeche Zollverein(ツォルフェアアイン炭坑遺産群)は2001年にユネスコ文化遺産に指定された旧炭坑・鉄鋼工場である。Zollvereinは「関税同盟」と訳される。これは国内の経済的統一を目的として「ドイツ関税同盟」が1834年に結成されたので、同じ年に開設された当炭坑にもこの名が付けられたのである。
ここで石炭の発掘が始まったのは19世紀半ばのこと、その操業は第一次、二次大戦を経て石炭需要が減少した20世紀末(1986年)まで続いた。採掘量は第一次大戦前夜で250万トンあり、1937年には360万トンに達した。第二次大戦で受けた損害が比較的少なかったので53年には240万トンにまで回復している。敷地は広大なもので、ヨーロッパ最大の規模を持つ。施設は立坑2カ所とコークス製造工場の計3カ所から成っているが、特に立坑XIIと名付けられた建物は今日高さ45mの最上階にパノラマ展望台を持ち、各階に案内所、常設と特別展示場、博物館、レストラン、カフェが設けられている。その2本の足を備えた立坑構造は 「世界で最も美しい炭坑」という評価を得ている。
ユネスコ遺産になって以来、来訪者の数が増え団体客が後を絶たない。見学グループだけでなく、構内旧施設を使用して色々なイベントも行われる。我々が行ったのは平日であったが、若い学生見学者が多く見られ、レストランのメニューは売り切れが出る、食べ物を運ぶトレイもない、という大盛況だった。
博物館の展示物は後日にゆずることにして、昼食後は我々の関心のあるボタ山を見ることにした。ユネスコ遺産として旧炭坑群が余りに有名になりすぎたためか、一般のガイドブックにはここのボタ山についてはあまり情報が載っていない。しかし、炭坑が存在した以上ボタ山はきっとあるという確信を持って出かけたが、やっぱり構内の西端、立坑XIIとコークス工場の間に見つかった。
規模は大きなものではないが、緑の樹々とニワトコの白い花に飾られた散策路は美しい限りだ。来訪者は少なく中年・初老の男女の姿をちらほら見かけるのみ。妻はあたりを見回し「白樺が多いということは、あまり人工的植林が行われず、自然生育にまかせた山のようね」と植物学の蘊蓄を披露する。ここのこじんまりした山は芸術作品の森と呼ばれ、彫刻家Ulrich Rückriemの手になる作品があちこちに展示されていた。
ボタ山見学の後、駐車場までの帰り道に当たる旧コークス製造工場(1961年建造)を通った。これはかつて1日に1万トンの石炭をコークスにする生産力をもった工場であったが、エネルギー革命が進み需要が減少、93年に操業停止している。今日その施設は撤去されず、ほとんどそのまま残されて種々の目的のため利用されている。赤錆に覆われた鉄骨やパイプ類に、何か芸術的な趣さえ感じるのは私だけだろうか。工場の片隅をそのまま使った「コークスカフェ」では、外来の客がコーヒーを飲み、昼食をとっていた。水を張った縦長のスペースは冬期スケートリンクになる、また床をくり抜いて造った水槽は夏期休暇中子供たちのための無料プールになる、ということだった。
今回はボタ山散策が主で、博物館の展示物を見る時間がなかったが、いつかまた訪れる機会があれば、かつてのドイツの産業を支えた鉄鋼工業の歴史の跡を辿ってみたい、と思う。
三千男さん。ぼた山の新しい所の散策ですね。今回は多少構造物、管類も見られ鉄鋼の印象が残っていますね。でも楽しいハイキングでした。別にブログで書いているようにディスクトップのpc不調で、慣れぬノート型で書いていて書き辛いです。大阪の山さん
返信削除ここへ来る人の大半はボタ山見学が目的ではない、旧炭坑、炭洗施設、鉄鋼とコークス製造所と博物館が主でしょう。次には博物館の方をゆっくり見てみたいものです。
削除PCの早期回復を祈っていますよ。