先日You Tubeを使ってゴシック体の大文字を書く練習をしていた時のこと。普通のカリグラフィー用ペン(dip nib)ではない、幅は4mくらいで薄っぺらい金属片のペンを使って書いている人がいた。何とスムーズに気持ちよく書けることか!途中の極く細い線書きも持ち方を変えながら自由自在だ。それに何文字も何行も続けて書いているのに、途中でインキを補充している様子もない。カートリッジ使用のものだろうと想像はついたが、初めて見るタイプのペンだった。
同じ日、画材・文房具の卸店Boesnerに行った時、似たようなペンを見つけた。軸にAUTOMATIC PEN MADE IN ENGLANDとある。これはカートリッジではなく、上下のペンの間(かなり大きく、少なくとも3mmはある)にスポイトでインクを入れるタイプのものだ。ペン幅4mm弱のものを買って早速試してみた。ペン先は柔らかく書き易いのだが、インキ溜めが大きいため最初は出過ぎて字がにじんでしまう。別紙に数本線を引いてからでないときれいな字が書けない欠点がある。そうするとその後インキの残量も少なくなり、またすぐ新たに補充しなければならない。
その後いろいろ調べた結果、上のカートリッジ型のものは日本製のパイロット・パラレル・ペンであることが判った。これはどうしても欲しくなり、日本へ依頼して早速送ってもらった。現在のところ1.5mm、2.4mm、3.8mm、6.0mmの4種類があり、それぞれ異なった色のキャップがついている。構造は写真で見ていただくとして、それぞれのセットには赤と黒のカートリッジ各1本、洗浄用コンバータ−、ペン先クリーナーがついている。
どんなペンでも使い慣れるまで少し時間がかかるが、最初の試し書きではイタリック体でもゴシック文字でも、パイロットのペンは良い感触で書けた。上手な人ならば「弘法、筆を選ばず」で、どんなペンを使ってもほぼ同じようなきれいな文字が書けるはずだが、ただ初心者にとっては、そのペンにどんな機能がついているかによって大きな違いが出て来る。特に練習をする時に数文字毎にインクを補充しなければならないのはイライラさせられる。そのため最近増えているカートリッジ方式のものが便利であることは言うまでもない。
パラレル・ペンという名前だが、カリグラフィー用のペンはすべて(カッパープレート用のポイントペンを除き)2枚の金属板を「パラレル」に(平行に)重ねその間にインクが溜まるようになっている。ただパイロットでは、その2枚の隙間が肉眼ではほぼ見えないほど狭く、その上インキの出具合もスムーズだ。
他のペンが真似出来ない、特筆すべきパラレルペンの特長の一つは、4つのどのサイズのペンも尖った端を使うと通常のボールペン並みの0.5mmの細い線が書けることだ。これは特にゴシック大文字を書く時の飾り線などに威力を発する。もう一つの優れた点は、色の異なる2本のペン先をタッチさせタップすると色が混じり合い、その後に書くと徐々に段階的に色の変わるグラデーション効果が得られることだ。今手元にインキの黒と赤しかないので、例でご覧の通りあまりぱっとしないが、12色ほど市販されているカートリッジをいろいろ混ぜて使えば、誕生カード、クリスマスカード作りに面白い味が出ることだろう。これでまた、カリグラフィーを使ってのカード作りに新しい楽しみが加わった。
三千男さん。昔、製図(青写真)で使ったペン先が細く二股に分かれたものがありましたが、インクは線を引く度に加え(黒色だけで専用ビンに浸け)ていました。クリアランスの寸法で線の細さや、太さをコントロールする方法でした。字もそれで書いていました。その時代から製図用ペン先の使用後清掃は大きな課題でした。似た形式の貴台が使われるカートリッジ型のものは、使用終了後、インク清掃や維持にどのような努力をされていますか。イギリス型は?大阪の山さん
返信削除技術関係の人にカリグラフィーペンの話をすると「ああ、製図の烏口(カラスグチ)と同じですね。よく使いました」と言われます。
削除ペン先の清掃はたしかに面倒ですね。私はdip nibの場合、インキ補充に使った筆もいっしょに古い歯ブラシ等使い水洗いをして乾かします。そのため洗面所の回りに何本かのペン先(ばらしたインク溜め板も)と筆が並びます。イギリス型も水洗いです。パイロットペンは紙質によりnibに繊維が溜まりかすれたり書けなくなるようで、それを取るためのクリーナーがついています。薄い金属?プラスチック?板で、2枚の(パラレル)ペンの間にさして掃除します。まだそんな問題は起こっていませんが、いずれ起こるでしょう。それ以上の水洗いをせよ、という指示は書いてありません。