5 月23-25日の聖霊降臨祭の連休、隣町Krefeldにあるリンの古城Burg Linnで毎年恒例のFlachsmarkt「亜麻市」が開かれた。その歴史はLinn地区が都市に昇格した1315年にまで遡るので、中世の名残をとどめる伝統的な市である。
Flachsとは亜麻の繊維のことで、これを使って出来るのがリンネルである。元々近隣の農夫が栽培した亜麻を馬具や鍋釜などと物々交換するために開いた市だったが、回を重ねるうちに、農夫だけでなくその他の商人や職人、大道芸人も加わり、年に何回か開かれる大きな市に発展した。
時と共に亜麻栽培が少なくなるにつれ「亜麻市」は徐々にすたれ、1903年には廃止の憂き目を見ることになった。しかし、この伝統ある市を過去のものとするには忍びないと,当地の人々が1975年にこれを復活させたのが今日まで続く「亜麻市」であり、ここラインランドだけでなくドイツ全国や近隣諸国からの職人、手工業者が集う聖霊降臨祭の呼び物になっている。
初日の5月23日午前、開場早々に日本の知人をご案内して会場を訪れた。この古城は中世騎士の居城であり、市の背景にはうってつけの背景となる。広大な敷地には草原や池があり、樹木も多い。そこに300以上の露店が立ち並ぶ様は見事というほかない。
やはり面白いのは、古い歴史を思い起させる職人たちの作る品物だろう。染色の屋台では自然の植物を使って染め物をしており、今日では目にすることが少なくなった桶作りが𥶡(たが)をはめている。鍛冶屋が燃え盛る炎の中から馬のひずめの鉄片を取り出し槌でカンカンと叩く。籠を編む人、木靴を削る人、轆轤(ろくろ)を回し器用にカップを形作るデモンストレーションをする人等々、来訪者は足を止められ、いつまでも見飽きることがない。
どの店の職人さんも、自分の技術に誇りを持っている様子がよく伺われる。珍しい品を客が手にすると、材料は何か、それをどうやって作ったのか、どんなに苦労して一つを作り上げたのか、細々と説明してくれる。それがこのような市の楽しみであり、面白さでもある。客も「それでは一つ頂きましょう」と買い入れることになる。我々も、リンネルの布巾、しおり、アスパラの皮から作った紙のランプシェード、インディゴで染めた帽子等々を買い入れた。
両親に連れて来られた子供たちも決して退屈することはない。広場では竹(木?)馬でバランス取り競争をし、染色の実習をし、お絵描きを楽しむことが出来る。
これを書いている25日は亜麻市最終日、本来なら一番混雑する日なのだが朝からかなり激しく雨が降っている。この地方しばらく降らなかったので「良いお湿り」と喜ぶ人は多いだろうが、亜麻市にとっては残念なことで、盛り上がりの日に文字通り「水をさされる」ことになった。良く晴れた最初の日に行った我々は本当にラッキーだった。