2015年1月14日水曜日

おめでとう、レオナード君!


 新年早々一つの朗報が入った。それは、2013年の5月から毎週私のところへ日本語の個人授業を受けに来ているLeonard(レオナード)君の日本留学が決まったという嬉しいニュースだった。

 最初会った頃のL君はまだ高校最後の学期で、大学入学資格試験であるAbiturをやっている最中だった。それまで約1年間まったく独学で日本語を勉強して来て、7月には日本語能力試験の5級を受験したいという希望があった。その試験には「聴解」の科目もあり、それまで一度も日本人と話したことがないので,文法や語彙の他に聴く訓練もしてもらいたい、ということだった。5級は無事合格、同年秋に大学生となったが、毎週の日本語授業は皆勤でいつも熱心に準備して来た彼は、続いて年末には4級もパスした。

 大学に入って数ヶ月後早速大学の外人局を訪ね、将来日本留学の機会があるかどうか打診を始めた。その結果、デュッセルドルフ大学は早稲田大学と姉妹校であり、そこでの1年間の留学プログラムがあることが判った。早稲田の奨学金もあるが、年間最優秀の学生1人にしか与えられず次の年の奨学生はすでに決まっていた。そこでL君は国家機関であるDAADの奨学金を目指し、すぐに登録手続きをした。留学の1年前に登録をすることが必要なのだ。

 DAAD (Deutscher Akademischer Austauschdienst)は大学間の国際交流を促進する目的で設置されている「ドイツ学術交流会」であり、世界各国で留学勉学を願うドイツ人学生、大学教員、研究者を援助している。(日本からドイツへの留学生奨学金援助をするプログラムもある)

 その間2014年夏の3級試験にも合格、去る12月には2級も受験した。L君、結果は上々だったらしく,少しも落胆・挫折した様子は見せていない。発表までにはもう数週間かかるだろうが、パスしていればこれまでストレートで来たことになり、これは驚くべき業績と言わねばならない。

 しかし、2級の日本語能力では日本の大学で日本語の講義を聴きセミナーでの討論は不可能である。1年間の日本留学で必要となるのは英語である。そのためDAAD登録学生は英語能力試験(Toefl)に先ず合格する必要がある。幸いL君はこれも120点満点を108点で合格した。このように準備を重ね、ついにDAAD最後の面接がボンで開かれた。受験者は200人で合格率は5倍の40人であった。
 
 L君、それまで1年間いろいろ準備を整え遂に面接に出席した時、わずか10分間で数人の審査員に、いかに自分の願望と意志を伝えようか、と苦慮したという。年末に到着した結果はこれまた合格だった。これで1年間奨学金を得て早稲田大学で勉強することが現実となった。遂に長年の夢が叶ったのである。専攻は経営学・ビジネス管理だが、特に統計学を基にした実験・観察経済(empirical economics)を勉強する、という。

 勉強の場は決まっても、宿舎は自分で探さなければならない。L君はインターネットで、大学まで山手線でわずか3駅という便利な「サクラハウス」を新宿に見つけた。ここは外国籍の学生やビジターを専門に取り扱う宿舎で、彼の場合月額家賃は97,000円かかる。日本への学生の奨学金月額は1,150ユーロであり、これはアメリカやその他の先進諸国を抜いて世界最大額である。現在の為替ルートで換算してざっと156万円ほどになる。その内宿舎のサクラハウスの家賃を引くと残高はあまりない。「後は両親に頼るしかありません」、と彼は苦笑いしていた。

 準備万端整いL君は3月日本に向けて出発する。ドバイ経由で長時間かかるが格安のEtihad Airwaysも予約した。私との個人授業もあと3ヶ月弱だ。「今回の留学はスタートラインについただけだと思います。これを土台としてさらに進みたいと考えています。日本では能力試験の1級を目指し勉強しパスしたら冬学期には日本語の講座に出たいし、漢字検定も受けます」とL君の夢と希望はさらに広がる。彼の能力と気力からすれば、これも実現しかねない。この日本と日本語に魅された有能で勤勉な若者に幸運あれ、と心から声援を送りたい。

2 件のコメント:

  1. 三千男さん。レオナードさんの日本語検定、日本留学を支援でき、合格もできたそうで、ご同慶の至りです。この努力で将来は何を目指すのでしょう。早稲田では経営、ビジネス管理を学ぶと、ドイツではどういう仕事になるのでしょうか。昔、ドイツから来たハンブルグからの留学生(数か月間、企業内研修とか)の面倒をみたことがあります。この人は専門は経済でしたが、アジア経済(特に日本)とドイツの関係を知りたいと言っていましたが、その後、帰国し楽器店で働くとの事でした。学校の専門と職種は必ずしも関連しないのだな、と思った思い出があります。レオナードさんの熱心さで今後も続けてもらいたいし、専門コースに関連するお仕事に就いてほしいものでね。大阪の山さん

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    1. おっしゃる通りで、学んだことをそのまま将来の仕事、研究に続行出来ればそれに越したことはありませんね。しかし現実はそう上手く行かず、思いがけない方向に行かざるを得ないことになることがあります(そう言う小生が良い例ですが!)。しかし何をやるにしろ、その都度力を込め集中して努力したことは、後日どんな方向転換をしても必ず役に立つ、十分利用出来る、というのも私の確信するところです。

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