2014年10月9日木曜日

ハンブルグの孫たち


 Sabath という語がある。元はヘブル語で「休みの日、安息日」を意味する。さらに sabatical yearという言葉も辞書に現れる。これは「安息年」であり、イスラエルの民に、7年毎に一定の農作地を休ませることを命じる古くからの掟であった。農地の生産力を回復させるための休息を命じた、実際的な知恵から生まれた掟であろう。

 同じsabatical year (時にはleave)という語は今日でもアメリカやカナダの大学で使われており、「休暇年度」と訳される。7年毎に大学教授に与えられる1年(時には半年)の有給休暇であり、その間教授たちは自分の大学と学部を離れ、自由に研究,旅行、または休養のために使うことが出来る。

 私の長女とその婿はカナダのエドモントンにあるアルバータ大学の心理学部と精神医学部で教えているが、7年目に当たる今年この休暇年度の恩恵を受け、自分たちで選んでハンブルグ大学病院で1年研究することにした。

 彼らは町の中にアパートを借り1ヶ月半前から住み始めた。娘はドイツ人であり言葉は問題なし、夫はカナダ人でドイツ語は十分ではないが専門分野では英語で十分仕事ができる。心配したのは7歳(娘、小学生)と4歳半(息子、幼稚園)の子供たちのことである。カナダでは生まれたときから母親はいつも子供たちにはドイツ語で話しかけており、現地のドイツ補習校に行っていたから、基本的なこと特にヒアリングと理解は出来ていたが、自分から積極的に話し意志を伝えることは十分ではなかった。7月にカナダから着いてロンドンで他の孫たちと一緒に休暇をした時も、ドイツ語での会話には積極的に入り込めなかった。

 先週末彼らの新生活を見るためにハンブルグを訪ねた。久しぶりのこのドイツ第3の大都市はやはり活気に満ちており、特に港町周辺はいつ来てもすばらしい。土曜日(104日)には半日水の見える地区、とくに何百mも続く砂浜に行って遊んだ。大都会の真ん中で向かい側にもの凄い港湾施設があり、巨大な山のようなコンテナ船が行き来する所にこんな砂浜があるのは大きな驚きであった。良い天候に恵まれ、初秋の温かい太陽を楽しみに出て来た人の数は多かった。


 さて、二人の孫たちのことに返ると…。この6週間の期間に彼らのドイツ語が完璧になっていたのには驚いた。両親が研究に従事している間、小学校と幼稚園に終日預けられるわけだが、その間聞き話すのはドイツ語のみ。初めは戸惑ったそうだが、今では普通のドイツ人の子供と同じように自由に話している。幼い子供の言語能力というものの素晴らしさを思い知らされた。


 ドイツでの生活はまだ始まったばかり、滞在はあと10ヶ月以上残っている。今度は英語を忘れてしまってカナダへ帰ってから困るのではないか、という恐れがなきにしもあらずだが、それも杞憂に過ぎないだろう。新しい環境に入ったらまた直ちに順応する能力が子供には備わっているのだから。これは我々大人がどう頑張っても残念ながら追いつけない特殊能力なのだ。

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