2013年6月22日土曜日

バラの季節、6月!


          (夏の花の女王バラは6月の今が最盛期)
 ドルトムンドにある「ドイツバラ園」(Deutsches Rosarium)は、70ヘクタールという広大なヴェストファーレン公園の中に「バラの道」として組み込まれ、この国でも3指に入る大規模な園である。我が家から車で1時間足らず、以前は初夏になると毎年のように出かけていたのだが、最近はとんとご無沙汰が続いた。快晴高温の続く今年の夏は是非にと、数年ぶり夫婦揃って出かけた。オランダの春のチューリップと並び、1年の内の「お花見」の楽しみとして夏の花の女王であるバラは見逃せないものである。
           (テレビ塔を背景に咲き競うバラの花)
 「真夏に咲く花(バラ)は一般に貧弱で…」とどこかの本で読んだ覚えがあるが、それは日本のことで、ここドイツでは67月が最盛期と言って良いだろう。 この国の気候はバラ栽培に適しており、人々は競って年に二千万本も植えるという。「バラほど栽培に簡単な花はありませんよ。植えたら植えっぱなしで良いんです」と隣人も笑いながら言うように、バラの大敵の斑点病やうどん粉病も出ず、アブラムシもつくことなくみごとに咲いてくれるのである。
 
 「ドイツバラ園」で見られるバラの種類は3000に達するという。この園の特徴は個々のバラの花の見事さ、珍しさはさることながら、その他の草本植物や木本植物と組み合わせて素晴らしいバラの庭を造り出す所にある。特に来訪者が散策を楽しむ「バラの道 (Rosenweg)」は40の部分(Station)に分かれ、歴史的・古バラ、ユーゲントスタイルバラ、芳香バラ、蔓バラ(高さ6m、幅65m)、カスケード(懸崖)バラ等々が次々と現れ、人々の目を楽しませてくれる。

 今回我々も数時間大いに楽しんだが、中でも深い印象を受けたのは歴史的バラのセクションで見た(そして香りを嗅いだ)数々の古バラだった。古バラの区域に入ると先ず漂って来る香りの素晴らしさに驚かされる。そして、近年になってあれこれ交配された花とは違う素朴なたたずまいのため、全体から受ける印象が全然異なる。花それ自体が整然と咲き並ばず、横にだらしなく広がっているし、花それ自体の強さも違うらしく、開花してから長持ちはせず、6月一杯で散り落ちてしまうのは残念だ。 Centifolia「百枚の花びら」と 名付けられた、 西暦1600年以前からの長い歴史をもつバラは、まるでキャベツのように沢山の花びらを丸くぎっしりと詰め込んだ形をしており、重そうに頭を下げぶらさがっていたので、写真を撮るのに妻の助けを借りなければならなかった。
       (いかにも重そうな花のCentifolia、西暦1600年以前の古バラ)
 園全体の構成のアイディアのすばらしさは驚くばかり、植物学的・専門的にバラを勉強する「学習路」というよりはむしろ、来訪者が身をもってバラを楽しむ「体験路」とするところに園側の意図がはっきりと見られる。とは言え、ある特定のバラの種類の原種・由来、歴史を調べたり、交配・栽培法、我が家の庭への適用を学びたい人のために、定期的にセミナーが開催されるし、何千冊という専門書を有する図書室も園内に備わっている。
          (「皇帝の林」のみごとなバラの散策路)
 最後の見ものは、テレビ塔の下に広がる「皇帝の林(Kaiserhain))と名付けられたStationで、その規模の大きさ、花の種類の多さから見てこのバラ園の圧巻だ。見事なアーケードの下をくぐり、懸崖バラに感嘆の声を上げ、落ちたばかりの花びらをそっと拾い香りに酔いながら「バラの道」を歩く…。そうしていると、このバラ園の設計者が造園法の技術を駆使しつつ、来訪者の審美的、心理的要求を満たすためにどれほど考慮を重ねているかがよく理解出来る。

4 件のコメント:

  1. 三千男さん。美しいローゼンガルテンの写真を拝見しました。若い頃「なぜ薔薇という字を見てバラと読むのか」不思議に思っていました。日本でも今はバラとは「洋バラ」のことですね。音読みでの中国渡来(どういうバラかな?)の表現が残ると言うことは後で知りました。ドイツの薔薇はイギリス、フランスなどと比べて古いのでしょうか。ドルトムントでのバラ園もやはりオールド型ローズ中心でしょうか。それとも改良されてモダン型中心でしょうか。大阪の山さん

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  2. 山さん、薔薇とは複雑な漢字を持ち出しましたな。漢和辞典で見ると、薔は音で「ショウ」で、薔薇の読みは「ショウビ」となる(らしい)。広辞苑で調べても、中国渡来のことは書いてありませんでした。通常鑑賞するのは洋バラのことですね。
    ドルトムンドバラ園は決してオールド型ローズ中心とは言えません。むしろ交配で新種を作ることに熱心ではないでしょうか。歴史的・古バラのセクションはごく限られたものです。

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  3. 美しいバラの写真を沢山見せていただいてありがとう!
    ドイツの気候がバラの生育に適しているのが羨ましいです。高温多湿の日本では病気や害虫との戦いに苦労します。私もバラが好きで猫額の庭に10数種類のバラを育てていましたが最近は寄る年波に手入れが行き届かず数も半減し残ったものも元気がイマイチで残念に思っていました。
    日本でこんなにバラが咲き乱れる場所が有れば人の数も多いでしょうに「ドイツバラ園」は人影が無いのが不思議です。
    私が育てていたバラで「なにわいばら」(ロサ・ラビガータ)という日本の原種が好きでした。

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  4. baabaさん、本当にこの国のバラ栽培は易しいらしい。我が妻がわずかなお金で買って来た鉢植えのバラも庭に植え替えておいたらすくすくと育って、毎年驚くほどの数の花をつけています。お宅の庭に10種類ものバラが植えてあったことはとんと知りませんでした。もっともバラに季節に訪日することも少なかった。
    この日(金曜日)は本当に来訪者が少なかったです。団体は小学生のグループがひとつだけ、あとは初老の夫婦が数組、数軒ある園内のレストランも閉めている所が多かった。日本種の花も交換で入手したと園のニュースで読みましたが、実物は見られませんでした。

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