(アルカーデン入り口。「きかく」は入ってすぐ左側)
デュッセルドルフ空港の「エアポート・アルカーデン」には、乗客がショッピングしたり食事をする商店やレストランが並んでいる。そのほぼ真ん中に「きかく」寿司店のカウンターがある。空港側から是非にと懇願され、開店したのは2005年のことだった。
(午後3時ごろ、客は少なく閑散としている)
通路の真ん中にあるカウンターなので火を使って料理することは不可能、それで寿司飯とネタは10キロ離れた本店から毎日運ぶということで営業が始まり、その間1日も休むことなく、今年で8年続いている。場所が空港であるのでこの寿司屋も年中無休で営業し、従業員も常時確保しなくてはならないのだ。特に一番大事な寿司を握る職人の確保に苦労すると聞いた。
(味噌汁をすすり、握り寿司を食べる初老の紳士たち)
営業開始は10時だが、2人の従業員が9時に出勤し清掃・準備をする。9時半には寿司を握る職人が到着、本店からご飯と魚が届けられ、10時開店と共にぼつぼつお客もやって来る。客が一番多くなるのは夕方5時以降8時近くまでで、働く人も3人から5人に増やさなければならない。週の内繁盛するのは出張ビジネスマンの行き来が激しい水曜から金曜にかけてである。毎晩8時を過ぎて乗り降りの客もまばらになると閉店の9時となり1日の営業が終わる。しかし時には例外もあり、8時過ぎから空腹を抱えた人々がどっと押し寄せることがある。営業時間は守らなければならず、寿司飯もネタも底をついている時はタクシーで本店から取り寄せ、9時までは客に食べさせなければならないのだ。
(蝋で作った食べ物の見本はドイツ人にはめずらしい)
メニューは寿司盛り合わせが43ユーロから17ユーロまで5種あり、その内最も出るのは握り5つ、軍艦巻き1つ、鉄火巻き1本から成るメニュー「Sapporo」(22ユーロ)であり、その他細巻き9種、裏巻き5種も揃っている。寿司になじみのない客には、日本レストランにしか見られないガラスケースに入った蝋で作ったサンプルが大いに役立つようだ。事実時にはドイツ語も英語も話さない客も来るので、彼らは一言も話さないでサンプルを指差すだけで欲しいものが注文できるのは便利だ。
(さて私たちはどれにしましょうか?)
開店して数ヶ月後「デュッセルドルフ空港ジャーナル」(2006年1月号)に寿司の記事が出てインタビューを受けた初代の板前Sさんのため、私が翻訳したものがPCに残っていて読み返し懐かしく思った。この記事では、インタビュー記者は空港内カウンターの宣伝はあまり書いておらず、寿司がどんなものか、どうやって作る(握る)のか、正しい食べ方は、寿司職人の訓練・修業がいかに厳しいか、等に重点を置いている。そして結論として「寿司は日本版ファーストフードである」と締めくくり同じ題がついている。彼はハンバーガーやフライドチキン、牛丼等に用いられるファーストフードと同じような意味で考えているのか?この語には「短時間で調理あるいは注文してからすぐ食べられる手頃な食事」という定義があるが、記者は「注文してすぐ食べるべき食事」という点を強調したかったのだ。ドイツにはすぐに食べない寿司がスーパー等に出回っているからだ。プラスチックの箱に詰められ冷蔵はされているが、賞味期限として3日後の日付がついている!「スーパーで寿司として売られているものは、日本の伝統的食文化とはまったく関係のないものです。私が握った寿司はすぐに手に取って食べて欲しいのです」と強調したSさんの言葉から、記者は「寿司はファースト(早く=新鮮なうちに)フード(食べるもの)日本版である」という結論に達したのであろう。
プラスチック箱に詰め3日後の日付をつけて寿司が売れるなら、「きかく空港店」の寿司職人さんも寿司ネタを届ける従業員諸氏もずいぶんと楽になるだろうに!
(こちらは握り立て、本物のメニューSapporo)
三千男さん、私もデュッセルドルフ空港は何度か使ってきましたが、日本へはフランクフルトでの乗り換え前提が多く、急ぐ場合がほとんどになり、ゆっくりした時間もとれず空港内に寿司のお店があったことを知りませんでした。不便な地域で二十か二十数ユーロで食べられるお寿司はリーズナブルでしょうね。”きかく”というお寿司屋さんの繫昌を祈ってやみません。味は如何でしょう。職人さんの主体はドイツ人マイスター?ですか。大阪の山さん
返信削除山さん、ホールでサービスをする従業員の中には時々現地のアルバイトの人もいますが、寿司職人さんは例外なく日本人のマイスターです。「きかく」の寿司の味はこの町で一二を争う良いもので、私たち夫婦もよく出かけます(本店の方へ)。週末等待つ人の列が出来るほど「繁盛」しています。
返信削除空港のお値段は本店に比べれば少々高くなっている、という感じですが、材料を運んだり人員確保に苦労するだけにこの値段になるのでしょう。今度デュッセルに来られる機会にはぜひ本店、空港店の両方で味見をして下さい。
見るからに美味しそうなお寿司の盛り合わせ、お値段は良いようですがドイツ人にも人気が有りますのね。日本が誇れるお寿司の食文化、外国人の間でも人気が有るのは嬉しい限りです。デュッセルの空港に降り立ったのはもう17年も前になりますがそのころはまだありませんでした。味を落とさず頑張っていいものを提供して人気が持続するように・・・・
返信削除baabaさん、現在欧米人の間の寿司流行は目を見張るものがあります。味にもなかなかうるさい人がいて、美味しくない寿司屋はすぐに敬遠されます。
返信削除デュッセル空港17年前のあの頃は大火災の後始末で大変な時でしたね(昨年の来独はフランク経由だったし)。その頃もちろん「きかく」のカウンターもなかった。本店よりも値段は格高になっていますが、果たして儲かっているのかどうか?今度支配人にそれとなく訊いてみます。