2015年6月24日水曜日

生地は手に入れたけど…




 先日ハンブルグへ行った時、街角の室内内装用品店の前で掘り出し物を見つけました。それはカーテン地等の布地のサンプル(見本)を本のように綴じたものです。客はそこから選んで気に入ったものがあれば、店の人が奥から出して来て売るという目的で置いてあるものです。









 店に長く置いて原物の生地が売り切れ製造元が織るのを停止すれば、もうサンプルは不必要となります。そんなサンプルが何十個かハンガーにつり下げられ、一つ3ユーロの安さで売られていたのです!どれを見ても柄は良い、色も模様も素敵、質も上々のものばかりです。それに、このようなサンプルはたいていサイズが小さく、そのままでは精々クッション(2枚合わせで)とかランチョンマットくらいしか出来ず、大きいものを作る時は何枚も継がなければなりませんが、ここのは長さも幅も1mかそれ以上もあるのです。













 その中の華やかな一例をご覧下さい。材質はポリエステル100%となっています。柄は一寸トッピなものですが、「着る!」という妻の保証を取り付けたのでシャツブラウスを縫うことにしました。細身の妻は3436という市販の型紙の一番小さいサイズで間に合うのでそれを使うことに。でも生地のサイズは120cmX150cmほどで一寸足りないか?どこかを省略すれば…?袖はカフスつきの長袖にしたいし…。結局襟をスタンドカラーにすることで解決出来ました。今日でここまで縫えました。後はカフス(ボタン3個つき)をつけボタンの色を決めれば完成です。













 ここまで「サンプル」と書いてきましたが、2つ目のものはこのままでも小さい窓なら一枚のカーテンとして使えそうなサイズです。見本ではなく、そういう物として売られていたものかもしれません。この色なら男物のシャツに合いそうですがサイズが苦しい。半袖にする解決法もありますが、生地が厚く夏用のシャツには…等々いろいろ悩んでいます。同じ模様で小さい色違いが30種ついていますが、これはうまく縫い合わせればパッチワークが出来そうです。













 第3のサンプルは一番難しそう。ザラザラした手触りで透明、そしてフワフワとした軽さです。これでいったい何が出来るのでしょうか。良いアイディアがおありの方がおられたらお教え下さい。

 通常は縫う物が決まってから生地を探しに出かけるのですが、生地が先にある場合はその逆で、縫えそうな物を物色するということになります。しかし、これまた違った面白さがあるものです。

2015年6月21日日曜日

おいしいコーヒーを淹れるには


 我が家では毎日必ずコーヒーを飲みます。といっても1日に10杯というような熱狂的コーヒー党ではなく、朝食に夫婦がそれぞれ2杯ずつ飲むだけです。

 朝出勤時間の割合早い妻ですが、早く起床してまずコーヒーの用意をします。それはインスタントコーヒーではなく、コーヒー豆を手で挽いてドリップ器を使って淹れるからです。今買い置きの豆は東アフリカ高地のアラビカ種、南米グアテマラ豆、それにエスプレッソ用豆の3種です。

 







 挽くのはZassenhaus製の伝統的な手動器です。電動のものも持っていますがコーヒーの香りが損なわれるというので、今では地下室に眠っています。Z社の品は25年保証付きで売られていることから、自社の製品に大変な自信を持っていることが判ります。いつかハンドルの調子が悪く挽く粉の(粗い細かいの)調整が上手く行かず、買った店を通して修理を依頼したらすぐに反応がありました。それが思いがけず、修理ではなく代替物として全くの新品が送られて来たのです!









 さて,挽いた粉をフィルターに入れドリッパーにのせお湯を注ぐのが次の作業です。これについて最近新しい情報が入り,妻が通販を通し買った磁器製のがこれ、日本のハリオ(Hario)社のものです。









 従来使っていたドリッパーとの違いは、1.形が円錐形になったこと、2.お湯の落ちる穴が大きく、一つだけになったこと、3.湯の流れるリブ(溝)が深いスパイラル形になったことです。1で、深いコーヒー粉の層ができ、中心に向かって流れるお湯がコーヒー粉に長く触れ、成分がしっかり抽出され、2で、よりネルドリップに近い抽出ができ、お湯を注ぐスピードで好みの味が得られ、3で、ペーパーとドリッパーの密着を防ぎ、コーヒー粉の膨張が妨げられずうまく蒸らされる、と宣伝文句に書かれています。

 これまでも、粉にいっぺんに湯を注がず先ず30秒ほど蒸らす必要がある、ということは知っていました。そして後は出来るだけゆっくり時間をかけて淹れるのが最適と思っていました。しかし、大きな一つ穴のドリッパーがついたことから、そうでもないことが判りました。注ぐ時間は味により変化させるらしく、これは経験により自分の好きな味に達するしかないでしょう。それと、フィルターの紙に触れないように粉の中心にうずを巻くように湯を注ぐことも大切であることを学びました。

 さてこのようにして淹れ始めた朝のコーヒー、味の方は良くなったでしょうか?確かにまろやかさを感じますが、これも店で最高の値段がついていたEast Africa Vulcanoの豆を新しく使ったので気のせいでしょうか?コーヒー味を良くするための器具の選択と淹れ方の勉強は、さらにしばらくの間続けなければならないようです。

2015年6月17日水曜日

すごい切れ味の鋏類


 春から初夏にかけここヨーロッパ北部の自然はめまぐるしく変化します。先ず遅い春の訪れとともに野原に紫、白、黄の可愛らしいクロッカスが咲き出します。そして森の枯れ木が新緑の葉で一面に飾られたかと思うと、数週間でその黄緑が次第に濃さを増してきます。

 次は公園にチューリップが咲き始め、藤棚には紫の房が垂れ下がります。5月になればツツジ、シャクナゲが満開となりますがそれも束の間、数週間でその花は一つ残らず枯れ落ちます。そして6月に入った今はバラ全盛の時期となっています。









 アパート暮らしの我々も地上階(日本流で1階に当たる)に住むという特権を利用して、少しのスペースに木や花を植えさせてもらっています。私の還暦祝いにもらった藤の苗木は、その後◯◯年(?)経ち今ではベランダの屋根に沿って数mほど延び、妻が安い値段で買ったバラの木はもう庭の一隅を覆うほどに成長しました。

 ベランダから手を伸ばしたり、脚立を持ち出して高いところの枝を切るのは大変な作業です。「せめて数十センチの柄のある刈り込み鋏があればねぇ」というの言葉に、思い出したのが高校の同級生O君です。彼は広島県尾道市因島にある、岡恒鋏工場の社長です(だった?もう引退して息子さんに譲ったかな?)。この分野では国内で、否国際的にも評価の高い製品を出しておられる有名な会社です。以前TV番組「和風総本家」で見たのですが、日本製の庭木・剪定・刈り込み用の鋏は,文字通りスッパっと切れ樹木を傷つけることがなく、その切れ味の優れていることで世界各国に知られ引っ張りだこだそうです。









 彼には以前からステンレスいけ花鋏や200m剪定鋏等送ってもらい愛用していました。それで今回も厚かましく長い柄のついた刈り込み鋏を所望したのです。それに快諾くださり,ご覧のような刈り込み鋏が、なんとお願いしてもう4日後に着いたのです。

 剪定という言葉がありますが、これは専門家のやる作業に使うべき言葉でしょう。樹木の形を整え、風通しを良くし、養分を効率よく採らせ、成長を促進し、害虫の繁殖を予防する、等々が剪定作業の目的のようですが、我々のやることはこれにはほど遠い!ただ枯れ枝や延び過ぎの枝を切るだけのこと、これには「剪定」ではなく単なる「刈り込み」か「切断」が適当でしょうね。

 お陰でベランダ周囲や書斎の窓外付近の延びすぎた枝が払われ、本当にスッキリしました。ここに掲載した鋏の種類はほんの数種類ですが、「岡恒」印のその他の鋏類は実に数多く揃っています。一度インターネットで検索なさることをお薦めします。柄に付けられた鮮やかな白と赤の色が特長です。下の娘同伴で彼の鋏工場を見学したのはもう10年以上も前のこと、その時の生口島の海岸近くの工場は、高潮による危険大ということで、因島の重井に新工場を新しく造られたと聞いています。昨年秋、重井には行ったのですが夜間のことで機会を逸しました。近代技術の粋を備えたそちらの工場も、近々是非お訪ねしたいものです。

2015年6月11日木曜日

一族の集まりで


 靴販売会社Deichmann2014年の統計によると、従業員36,000人余、ドイツ内に1,363店舗の支店を持ち,靴販売数は全世界で17200万足(その40%はドイツ)売り上げ49億ユーロに達する。この会社の支店・販売所はドイツだけでなく全欧州、アジア、アメリカまで全世界22カ国に及ぶ。

 1913年に初代の創始者Heinrich Deichmann(我が妻の祖父)がエッセンで、妻のJulieと細々と始めた靴修理店がそもそもの始まりであった。その後靴修理だけでなく販売も始めたが,彼のモットーは「ルール炭田地方の貧しい労働者に安くて丈夫な靴を提供すること」であった。








 

 1940年夫死去の後は妻が店を引き継いだ。一家には女4人男1人の子供があり、その次女が妻の母(私の義母,1993年死去)である。この会社が大きな進展を達成するのは第2次大戦以後第2世代になってからのことであり、それには只一人の男子で末っ子のHeinz-Horst Deichmann1926年生まれ、親族内ではハインツと呼ぶ)の力に負うところが大きい。戦後から今日に至るまでの会社の発展,特にハインツの貢献については2013105日のブログ「Deichmann100周年記念式典」に詳しく書いたので合わせ読んで頂きたい。http://mitschis.blogspot.de/2013/10/0-false-18-pt-18-pt-0-0-false-false.html

 







 そのハインツも昨201410月にこの世を去り第2世代が終焉、会社の運営は彼の末っ子で4番目の長男Heinrich-Otto Deichmann(親族内ではハイノーと呼ぶ)の手に渡された。第3世代が始まったのである。この世代は50歳—70歳代で計18人,それにイスラエル、スイス、インドネシア、日本の外国人(!)を含む配偶者(既に他界した者3名)たちがいる。昨年前会長の葬儀に集まった時、親族の数人から「我々が一同に会し話し合えるのは葬式・埋葬式の時だけだ。次には本当に楽しく語り合うための機会が持ちたいものだ」という提案の声が上がった。

 それが実現したのが先月末の週末、場所はヴッパータール郊外の農地フェルバートにあるハインツの妻ルト(故人)の生家であった。集まったのは第4、第5世代を含め大人50名子供30名ほどの大集団であった。第4世代には更にフランス、ベルギー、モロッコ、パキスタン,ポルトガル人の配偶者が加えられている。

 











 メインの会場は以前の納屋を改造したところ。現社長のハイノーの挨拶に始まりコーヒータイムと続き、音楽プログラム,モーツアルトの「フルート四重奏」が披露された。一族には何人かのプロの音楽家がいるので、こういう会には必ずクラシック音楽が演奏される。そして夕食のグリルパーティとなり会は最高潮に達する。天候も我々に味方し、午後の雨模様は夕刻には上がり、緑の畑地に注ぐ太陽の光が美しい!久しぶりに会った者、新たに一族に加えられ知り合いになった者共々長時間にわたり、この上なく楽しい時を持つことが出来た。

 一族のメンバーのデザイナーが準備した大きな一族の家系図には3世代までの名前が既に書かれていた。それに、4世代以下の参加者が自分たちと子供たち第5世代の名前を書き加えた結果、大変な数となった。合計で何人になったかは分からないが、後日それに基づいて新しい家系図が作られることになっている。待ち遠しいことだ。

2015年6月4日木曜日

都会で野菜を!


 デュッセルドルフ南部にバロック、ロココ、古典主義を合わせ建てられた美しい「ベンラート城」がある。建物内部とライン河まで延びる大きな森を含むベンラート公園を見学に訪れる人の数は年間を通して多く、市の観光名所となっている。

 







 
 公園の一角にある「自然地理博物館」に属する「エリザベートガーデン」でイベントがあることを知り出かけた。題は「都会で野菜を!」となっている。市内各地にある都会の住民のための家庭菜園についてはこのブログに何度か紹介したが,今回のイベントはそれよりもずっと規模の小さい野菜栽培のプロジェクトである。

 今日スーパーで多くの種類の野菜、果物が買えるようになり、人々は自分の手でそれらを作るという気持と喜びを失っている。そのため自分たちの食べる食材の出所・由来(どこから来るのか)はおろか、どのシーズンに何が穫れるのかも知らないでいる。そんな住民のため同園では野菜栽培のための知識とチャンスを与えたいと、昨2014年からこのプロジェクトを始めた。









 
 基本となるのは、種々のサイズからなる四角の箱形の苗床であり、必要に応じて設置場所を移動することができる。個々の箱は小さいのでスペースも多くは必要ないし、ベランダに12個置いても良い。内部にプラスチックの袋を敷き、そこに木材のチップ、コンポスト、土を入れる。モデル設備では水のための黒いタンクがついており、そこからホースで自動的に給水が出来るようになっている。

 手渡されたパンフレットには、この地方独特な野菜、今では見ることも稀になった「歴史的」な野菜も作れるとあるが、写真を見る限りニンジン、ジャガイモ、ラディッシュ等も表面の色が少し異なるだけで、珍種とは言い難い。具体的にその他どんなものがあるのか、この点をもう少し詳しく訊くべきだった。

 菜園では多くの新発見が出来るが、仕事も少なくない。「そのため共に種を蒔き、雑草を取り除き、失敗もし、新しい試みをし、共に成功を祝いましょう」、と同園ではワークショップへの参加者を募っている。

 それを知って妻も「週末にでもやってみようかしら」と言い出した。30所帯からなるアパート暮らしをしている我々には、自分自身の土地を耕して種を蒔き、育て、収穫する可能性はない。精々ベランダにプランターを置いて、花か野菜を育てるだけだ。事実今の季節、日本から送ってもらった「大葉」(紫蘇の葉)と「ミツバ」(欧州では珍種!)が芽を出したので喜んでいるところだ。

 しかし、基本となる箱や給水タンク、ホース等を買い整え、種を選び、肥料を準備し、日々欠かさず手入れする費用と手間を考えると…。結局角のスーパーに走って、欧州各地から送られる種々の野菜を買う方が安くつくことになるのでは?そんなことを言い出したら、自らの手で働いて栽培する喜びは得られないだろう。ここは思案のしどころだ。