デュッセルドルフの北東、車で150キロほどの所に、人口15万ほどの中小都市パーダーボルン(Paderborn)がある。この町には大司教座があり大聖堂で有名なカトリック都市だが、ここでCredo「中世ヨーロッパのキリスト教化」という展覧会が7月27日から11月3日まで開かれていることを知り、1泊2日で見学に出かけた。
(13世紀に遡る歴史的な大聖堂)
イスラエルの片田舎の指導者イエスから出発したキリスト教が、弟子・使徒たちにより古代ローマの世界に伝えられ、激しい迫害にもかかわらず、遂には国家認可の宗教になる。やがて、その教えがアイルランドやアングロサクソンの宣教師により大陸全体に広められ、時の支配者(特にフランク族の)の国家統一の野望と結びついて大きな発展を遂げ、ヨーロッパの中世が始まる。
フランク族メロヴィング、カロリング王朝の軍隊が征服した地区(例えばフリースランド)そして今日のドイツに当たる各都市に宣教師として活動したヴィリブロードやボニファチウス(ドイツの使徒と呼ばれる人)の功績が挙げられる。彼らの宣教には、異教を信じる原住民との激しい戦いがあり、殉教者も多く出たが遂にはキリスト教に勝利をもたらした。
(大聖堂を背景にした第一会場司教区美術館の入り口)
(第二会場の皇帝館美術館)
中世のヨーロッパキリスト教化にはカール大帝(シャルルマーニュ)の働きが大きな力を発揮したが、彼のとったのは「洗礼を受け入れよ、しからずんば死を」という、必ずしも平和的な手段ではなかった。いずれにせよヨーロッパ中世のキリスト教化は、国家と結びついて絶えず伝播し民の中に浸透して行ったのだ。
次の発展は更に北に東に伸び、スカンジナビア(北欧)や東欧の国々に、それぞれローマカトリック教会やビザンチン教会の誕生を見た。
(町中に見られるCredo展覧会の広告旗)
このように広範にわたるテーマを扱った展覧会であるため、パーダーボルンの会場は「司教区美術館」「皇帝館美術館」「市立美術館」の3カ所に分かれ、それぞれ「世の光(Lux mundi)「この印にて(In hoc signo)「いずこに行くか?(Quo vadis?)」とラテン語の副題がつけられ、全世界から集められた時代毎の膨大な数の遺物の展示がなされている。それらは、小さいものは手のひらに乗る指輪、首飾り、コイン等から、大きなものは何トンもある墓石、石棺まであり、よくぞこれまで集めたものだという驚きのスケールである。展示場内は写真撮影禁止なので、それらをここに掲載出来ないのが残念だ。重要なものはオーディオガイドで聞きつつ見学したが、全体をゆっくり見るにはもっと時間が必要だ。壁の説明掲示がドイツ語だけというのは少し不親切だ、という印象を受けた。
(平日午後、聖堂でのミサに集まる人は少ない)
毎週の教会礼拝への出席者が減り、特に若い世代には関心の薄い今日のキリスト教だが、今回の展覧会の副題の一つQuo vadis?を借りて、「ヨーロッパのキリスト教よ、お前は今後どの方向に行くのか?」という問いかける人は少なくないだろう。
三千男さん。好い展覧会を泊り込みで見られたのは、ご同慶の至りです。50年近く前、私はアメリカ西部劇映画で副主役のバート・ランカスターが印象に残った「QUO VADIS 日本題 クオ・バディス」を覚えています。どこへ行くのか?という意味を、今知りましたよ。ラテン語? ダンケ。大阪の山さん
返信削除2日間という限られた時間内に、これだけのスケールを持つ展覧会を綿密に見学するのはちょっと無理です。重要な展示物はオーディオガイドの説明があるので、見落とすことはありませんが、キリスト教以外の、例えばゲルマン異教の神の石像とかは、面白いし魅力的だと思いました。この市内なら何度か行くのですが…。
削除イタリアはもちろんカトリック、でも余りにも権力を降り過ぎて若者は教会から遠ざかり、信者達も様々な疑問を抱く様になりました。本当にこの先どうなるのでしょうか?
返信削除Miluさん、お久しぶり!お元気でしたか?
削除カトリック教会のミサや行事をテレビで見るたびに、あの着飾った聖職者たちの姿に疑問を持ちます。「僧の衣服の裾が長くなり華やかになった結果、宗教が腐敗して行った」という言葉を聞いたことがありますが、ある真理を語っていると思います。法王(教皇)様の訪問でどこでもすごい数の信徒が集まりますが、それと真の信仰とはあまり関係ないのでは?