テューリンゲンの休暇の最後の日、ドライブの途中で“Wildkatzendorf, Hütscheroda“という看板が目に入った。「山猫(野生猫)の村」とは面白い、と興味を引かれ行って見ることにした。このヒュッチェローダは民家も余りない小さな村で、住民の数はたった62人だ!ただ、かつての「領主の館(Herrenhaus))を改築して70床ほどの同名のホテルにしており、これがよく繁盛し宿泊客も沢山来ると聞いた。
この村の回りはみごとな草原に囲まれ、ここに沢山の野生の猫がいるという。村から出て数キロ、ぐるりと歩いてまわれるワンダーリングの道には「野生猫散策路」 (Wildkatzenpfad)という名前がついている。快晴の午前中のことで、黄昏時だけに活躍する野生猫に遭うことはなかったが、羊飼いが犬を連れ沢山の羊に草を食べさせていたのは実にのどかな風景だった。
1時間以上歩いた後、正午を少し過ぎていた頃村のはずれにある「野生猫観察所」なる小動物園の施設に5ユーロほど払って入ってみた。ところが猫は辺りが薄暗くならないと出て来ない、先刻11時頃に規定の与餌時間がありその時はえさを食べに出てきたのだが、次の2時の餌時までは昼寝だ、と係員が説明した。「何のために入場料を払って入ったのだ!」と、観客は皆少々おかんむりだ。係員も悪いと思ったのか、一生懸命施設と山猫の習性などについて解説を始めた。
「この観察台のついたガラス張りの施設建設には百万ユーロの費用がかかりました、ヒッチェローダの村は旧東ドイツの軍隊用射撃訓練所近くにあり、東西統一がなければ、立ち退き令が出て廃村になるはずでした、黄昏れ時に山猫の捉える餌は主にネズミ(時にはカエルも)だが、ここでは動物保護協会の反対で生きたネズミは与えられないので、殺してから与えています、(ヘビは死んだ餌は食べないのでペットショップや動物園などでは例外的に許されている)切符を売っている案内所で山猫のビデオを見せているのでお帰りにどうぞ」というような内容の話が20分も続いた。
私はそんな話の途中で抜け出し、カメラをもってあちこち歩き回った。ひょっとしたら猫に会えるのではないか?と願いながら。ところが、遠くからやって来たお客に気の毒だ、と思ったのか、一匹だけ若い猫が現れ、寝そべったり、目を開けたり、小山を走り回ったりして、写真のモデルになってくれた!そんな幸運に恵まれたおかげで、これでここに本当の山猫の写真が載せられる。
0 件のコメント:
コメントを投稿