毎年12月24日の午後は、孫たちの出演する“Krippenspiel“(クリッペンシュピール)が村のペトロ教会で行われる日です。Krippeとは家畜小屋にある「秣桶(まぐさおけ)」のことで、馬小屋で誕生したキリストがその中に寝かされたという言い伝えがあります。そのKrippeにSpiel(劇)の語がつき、そのまま訳せば「秣桶劇」ですが、通常「降誕劇」と呼ばれます。日本の教会でも「降誕劇(聖誕劇)」は恒例のものであり、教会学校の生徒たちが何週間も練習して準備します。
劇の筋はすべて聖書の記事に基づいています。だから、故郷に帰る「マリアとヨセフの宿探し」、やっと見つけた「馬小屋でのキリスト誕生」、誕生を知ってお祝いに来た「羊飼いたち」、輝く星に導かれて来た「東の国の3人の博士」、天から舞い降りた「天使の賛美の歌」等は全世界共通のテーマです。これに「マリアの受胎告知」(多くの名画のテーマとなっています)がつく場合もありますが、当日は省かれていました。その代わりに、この日の劇には各場面に「ペトロ教会のネズミたち」が数匹ついてきて、それぞれ何か台詞を言いました。これは参加する子供の数が多いため、そんな脚本をわざわざ選んだ、ということでした。
ドイツの教会には日曜学校がありません。時々教会付属の建物で一緒に集まって、工作やお絵描きをすることはありますが、アメリカや日本のように、毎週決まった日曜学校(教会学校)が開かれることはありません。だからクリスマス劇のためには特別にお知らせがあり、子供たちが集められ、話し合いをしてそれぞれに役が与えられるのです。うちの孫たちは5歳のユリアは天使、8歳と10歳の子には羊飼いのパートと台詞が割り当てられました。練習期間はクリスマス前4週間でした。
クリスマスの礼拝は、日本の神社の初詣と同じで、この日だけは出席する人の数が多く、通常はガランとしている教会堂は席がないほど一杯になります。「もう少し詰めて席を作って下さい。あと数人だけです、どうか譲り合って下さい!」と役員さんはお願いして回っています。そのため15分遅れの開演となりましたが、子供たち熱演の30分で無事クリッペンシュピールは終わりました。その後教会前の広場で人々は改めて“Frohe Weihnachten!“(クリスマスおめでとう!)と挨拶を交わし帰路に着きます。
そしてそれぞれの家庭では、クリスマスツリーの下におかれたプレゼントの箱や包みが開けられます。今年はどんなプレゼントがもらえるのか、楽しみに待っていた何日かがクライマックスに達する時です。このようにして、1年中で一番楽しいクリスマスの休暇が始まり、学校のお休みも年明けの1月8日まで続きます。